切創は皮膚や組織が刃物などの鋭利な物体によって切り裂かれた外傷です。日常生活において最も遭遇しやすい外傷の一つであり、包丁やカッター、ガラス片などによる受傷が多く見られます。当院では切創の程度に応じた適切な処置により、感染予防と早期治癒を目指し、患者様の日常生活への早期復帰をサポートいたします。
切創とは

切創は鋭利な物体により皮膚や組織が直線的に切り裂かれた外傷のことを指します。包丁やカッター、ガラス片、紙などによる受傷が一般的で、創縁が比較的整っているのが特徴です。深さや範囲により軽度から重度まで様々な程度があり、表皮のみの浅い切創から皮下組織、筋肉、神経、血管に達する深い切創まで存在します。
受傷部位により治療方針が異なり、手指や顔面など機能的に重要な部位では、より慎重な処置が必要となります。また、汚染された刃物による切創では感染リスクが高くなるため、十分な創部洗浄と抗菌薬の使用を検討する必要があります。
切創の症状と分類
切創の症状は主に疼痛と出血です。疼痛は受傷直後から生じ、創の深さや神経損傷の程度により異なります。出血は血管の損傷程度により軽度から重度まで様々で、動脈性出血では拍動性の出血が見られます。
切創の重症度は創の深さにより分類されます。第1度は表皮のみの損傷で、軽度の疼痛と少量の出血を伴います。第2度は真皮に達する損傷で、中等度の疼痛と出血が見られます。第3度は皮下組織に達する深い損傷で、強い疼痛と多量の出血を伴い、神経や血管、腱の損傷を合併することがあります。
応急処置の重要性
切創を負った際の適切な応急処置は、その後の治癒過程に大きく影響します。まずは出血のコントロールが最優先となり、清潔なガーゼやタオルで創部を直接圧迫し止血を図ります。圧迫により止血が困難な場合は、受傷部位の中枢側を圧迫することで血流を減少させます。
創部の洗浄も重要な応急処置の一つです。流水による洗浄により異物の除去と細菌の除去を行い、感染予防に努めます。ただし、深い切創や異物が刺入している場合は、無理に異物を除去せず、そのまま医療機関を受診することが重要です。
医療機関での診断と治療
当院では切創の程度に応じた適切な診断と治療を提供いたします。診断では創の深さ、長さ、汚染の程度、神経や血管、腱の損傷の有無を詳しく評価します。必要に応じて深部組織の損傷を確認し、最適な治療方針を決定いたします。
軽度の切創では創部の十分な洗浄と消毒を行い、適切な被覆材により湿潤環境を維持します。深い切創や長い切創では、局所麻酔下での縫合処置により創部を閉鎖し、機能的かつ美容的に良好な治癒を目指します。縫合には部位や創の状態に応じて吸収糸や非吸収糸を使い分け、張力のかからない適切な縫合を行います。
感染予防と抗菌薬治療

切創の治療において感染予防は極めて重要です。創部の十分な洗浄と消毒により細菌の侵入を防ぎ、清潔な環境での処置を心がけます。汚染された創や深い創、免疫力の低下している患者様では感染リスクが高いため、予防的な抗菌薬投与を検討いたします。
破傷風の予防も重要な要素です。汚染された刃物による受傷や屋外での受傷では破傷風のリスクが高くなるため、予防接種歴を確認し、必要に応じて破傷風トキソイドの投与を行います。定期的な創部の観察により感染兆候の早期発見に努め、発熱や創部の発赤、腫脹、膿性分泌物などの症状が見られた場合は速やかに治療を開始します。
縫合処置とアフターケア
縫合処置では創縁の正確な整復により、機能的かつ美容的に良好な結果を得ることを目指します。真皮縫合により創の張力を分散させ、表皮縫合により創縁の細かな調整を行います。縫合糸の選択は創の部位や患者様の年齢、活動性を考慮して決定いたします。
術後のアフターケアでは創部の安静と適切な被覆により、感染予防と良好な治癒を促進します。創部は清潔に保ち、定期的な処置により治癒過程を観察いたします。縫合糸の抜糸時期は部位により異なりますが、顔面では5-7日、体幹では7-10日、四肢では10-14日程度で行います。
特殊な切創への対応

神経や腱、血管の損傷を伴う切創では、専門的な治療が必要となります。当院では初期処置と応急手術を行い、必要に応じて専門医療機関への紹介を行います。手指の切創では機能回復が重要となるため、早期の適切な治療により後遺症を最小限に抑えることが期待できます。
顔面の切創では美容的な配慮が重要となります。丁寧な創縁の整復と細かな縫合により、傷跡を目立たなくする努力をいたします。また、表情筋の損傷が疑われる場合は、機能的な回復も考慮した治療を行います。小児の切創では、成長に伴う創の変化も考慮し、将来的な機能や美容面への影響の軽減を目指します。
創傷治癒の促進
切創の治癒過程は止血期、炎症期、増殖期、成熟期の4つの段階に分けられます。各段階に応じた適切な創傷管理により、合併症を防ぎながら治癒を促進させます。湿潤環境の維持は創傷治癒を促進するため、適切な被覆材の選択と定期的な交換を行います。
栄養状態の改善も創傷治癒には重要です。タンパク質、ビタミンC、亜鉛などの栄養素が創傷治癒に必要であり、必要に応じて栄養指導を行います。糖尿病などの基礎疾患がある場合は、血糖値のコントロールにより創傷治癒の改善が期待できます。
合併症の予防と対応

切創の合併症には感染、創離開、瘢痕形成、神経障害などがあります。感染予防には適切な創部管理と抗菌薬の使用が重要です。創離開の予防には適切な縫合と術後の安静が必要となります。
瘢痕形成を最小限に抑えるには、適切な創縁の整復と張力のかからない縫合が重要です。術後は瘢痕の成熟過程を観察し、必要に応じて瘢痕治療を行います。神経損傷による知覚障害や運動障害が生じた場合は、理学療法や専門的な治療により機能回復を図ります。
予防と日常生活での注意点
切創の予防には日常生活での注意が重要です。包丁やカッターなどの刃物を使用する際は、正しい使い方を心がけ、集中して作業を行うことが大切です。使用後は適切に保管し、子どもの手の届かない場所に置くことが必要です。
作業時の安全対策として、適切な作業用手袋の着用や安全装置の活用により、外傷のリスクを軽減することができます。ガラス製品の取り扱いにも注意し、破損した場合は適切に処理することが重要です。お子様がいる家庭では、危険物の管理により一層の注意が必要となります。
受診のタイミング

切創を負った際は、程度に関わらず早めの受診をお勧めします。特に以下の場合は迅速な医療処置が必要となります。出血が止まらない場合、創が深く皮下組織が見える場合、異物が刺入している場合、神経や腱の損傷が疑われる場合、汚染された刃物による受傷の場合です。
手指や顔面の切創では、軽度に見えても機能や美容に影響する可能性があるため、専門的な評価が必要です。当院では夜間診療も実施しており、急な外傷にも迅速に対応いたします。適切な初期治療により、合併症の予防と良好な治癒を目指します。
切創でお困りの際は、症状が軽いうちに当院までご相談ください。患者様の症状に応じた適切な治療により、早期回復と機能回復をサポートし、日常生活への早期復帰を目指します。