生活習慣病とは
過食や偏食、運動不足、ストレスなどといった生活習慣が原因で起こる慢性疾患が、生活習慣病です。生活習慣病は、日頃の不摂生による生活習慣が原因で起きるさまざまな病気を総称した呼び方で、代表的なものでは糖尿病、高血圧、脂質異常症（高脂血症）が挙げられます。
これらの疾患の最も大きな特徴は、自覚症状がほとんどないことです。そのため「サイレントキラー」とも呼ばれ、気づかないうちに病気が進行してしまいます。悪い生活習慣を続けてしまうことで、動脈硬化や狭心症、心筋梗塞のリスクも高まってしまいます。
複数の生活習慣病を患ってしまうことで、心臓病や脳卒中が生じるリスクがさらに高まり、生命に関わる可能性もあります。
糖尿病について
糖尿病とは
糖尿病は、血糖値が慢性的に高い状態が続く疾患です。インスリンというホルモンの分泌不足や働きの低下により、血液中のブドウ糖（血糖）が細胞に取り込まれにくくなることで発症します。
糖尿病の種類
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。生活習慣病として問題となるのは主に2型糖尿病で、全糖尿病患者の約95%を占めています。1型糖尿病は自己免疫によりインスリンを分泌する細胞が破壊されるのに対し、2型糖尿病は生活習慣が主な原因でインスリンの働きが悪くなる疾患です。
糖尿病の症状
初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、病気が進行すると口渇、多飲、多尿、体重減少、疲労感、視力低下などの症状が現れます。
糖尿病の合併症
さらに進行すると以下のような重篤な合併症を引き起こす可能性があります。糖尿病性網膜症は失明の原因となり、糖尿病性腎症は人工透析が必要になる場合があります。糖尿病性神経障害では手足のしびれや痛み、足の壊疽が起こることがあります。
糖尿病の治療
糖尿病の管理においては血糖値のコントロールが最も重要です。食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて治療を行います。定期的な血糖値測定やHbA1c検査（過去1-2か月の血糖値の平均を示す検査）により、血糖コントロールの状態を評価します。
高血圧について
高血圧とは
高血圧は、血管に常に強い圧力がかかっている状態です。収縮期血圧（上の血圧）が140mmHg以上、または拡張期血圧（下の血圧）が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。
高血圧の種類
高血圧の大部分を占める本態性高血圧は、明確な原因が特定できない高血圧で、遺伝的要因と環境要因（塩分の過剰摂取、運動不足、ストレス、肥満など）が複合的に関与します。一方、二次性高血圧は腎臓病や内分泌疾患などが原因の高血圧です。
高血圧の症状
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるほど自覚症状が少ない疾患です。軽度の場合はほとんど症状がありませんが、重度になると頭痛、めまい、肩こり、動悸などの症状が現れることがあります。
高血圧の合併症
高血圧が続くと、心臓や血管に負担をかけ続けます。心疾患（心筋梗塞、心不全、狭心症）、脳血管疾患（脳梗塞、脳出血）、腎疾患（腎硬化症、慢性腎不全）、眼疾患（高血圧性網膜症）などの合併症を引き起こします。
高血圧の治療
高血圧の管理においては生活習慣の改善が基本となります。減塩、適度な運動、体重管理、禁煙、適量の飲酒などが重要です。これらの改善でも血圧が下がらない場合は、降圧薬による治療を行います。
脂質異常症について
脂質異常症とは
脂質異常症（高脂血症）は、血液中のコレステロールや中性脂肪（トリグリセライド）が異常な値を示す疾患です。LDL（悪玉）コレステロールが140mg/dL以上、HDL（善玉）コレステロールが40mg/dL未満、中性脂肪が150mg/dL以上のいずれかに該当する場合に診断されます。
脂質異常症の種類
脂質異常症には高LDLコレステロール血症（悪玉コレステロールが高い状態）、低HDLコレステロール血症（善玉コレステロールが低い状態）、高中性脂肪血症（中性脂肪が高い状態）があります。
脂質異常症の症状
脂質異常症も自覚症状がほとんどありません。しかし、放置すると動脈硬化が進行し、重篤な合併症を引き起こします。
脂質異常症の合併症
冠動脈疾患（心筋梗塞、狭心症）、脳血管疾患（脳梗塞）、末梢動脈疾患（下肢の血管狭窄）などの合併症を引き起こします。特に、LDLコレステロールは血管壁に蓄積して動脈硬化を進行させるため、「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
脂質異常症の治療
脂質異常症の管理においては食事療法が最も重要で、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控え、魚類や植物油を積極的に摂取します。運動療法も効果的で、有酸素運動により善玉コレステロールを増加させ、中性脂肪を減少させます。
生活習慣病の相互関係
メタボリックシンドロームとは
糖尿病、高血圧、脂質異常症は相互に関連し合い、一つの疾患が他の疾患を悪化させる悪循環を生むことがあります。これを「メタボリックシンドローム」と呼び、内臓脂肪の蓄積に加えて、これらの疾患のうち2つ以上が組み合わさった状態を指します。
メタボリックシンドロームのリスク
メタボリックシンドロームでは、心筋梗塞や脳卒中のリスクが健康な人の約3倍に増加するとされています。そのため、各疾患を個別に治療するだけでなく、総合的なアプローチが重要となります。
当院での生活習慣病治療について
早期発見への取り組み
生活習慣病で大切なのは、「早期発見」と「早期治療」です。症状の軽いうちに適切な薬でコントロールすれば、変わらない日常生活を送ることも可能と言えます。
検査項目について
当院では血液検査、血圧測定、心電図検査、などにより、早期発見に努めています。血液検査では血糖値、HbA1c、脂質検査、腎機能検査を行い、血圧測定では診察時血圧測定を実施します。
個別化された治療
患者様一人ひとりの状態に応じた治療計画を立案します。食事療法では管理栄養士による個別栄養指導を行い、運動療法では体力や疾患に応じた運動プログラムを作成します。薬物療法では患者様の状態に最適な薬剤を選択し、副作用の監視と薬剤調整を行います。
継続的な管理
生活習慣病は長期間の管理が必要な疾患です。当院では定期的な経過観察により病状の変化を継続的に監視し、合併症の予防のため定期的な検査による早期発見を行います。また、継続可能な生活習慣の提案や疾患に対する理解を深める患者教育も実施しています。
生活習慣病の治療対象者
こんな方は検査をおすすめします
- 健康診断で血糖値、血圧、コレステロール値の異常を指摘された方
- 家族に糖尿病、高血圧、脂質異常症の方がいる方
- 肥満傾向にある方
- 運動不足や食生活の乱れが気になる方
- 疲れやすい、のどが渇きやすいなどの症状がある方
よくある質問
日頃の生活習慣を見直し、改善に努めることで、健康的な生活を維持していくことが可能です。生活習慣病は「生活習慣を改善すれば予防・改善できる病気」でもあります。些細な変化でも気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。